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鍛冶屋サキュバス奮闘記

定期更新型ネットゲーム『sicx Lives』に参加している、リムル(579)の日記帳です。 主に日記置き場ですが、お絵描きしてたり、何か呟いてたりもします。

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焔の月 6日目

 
 
 ハロウィンから一夜明けた朝。
 
 
 身支度を整えてテントから出ると、
 すでに朝食の支度を始めていたネピアちゃんと目があった。
 昨夜のかぼちゃワンピースからいつもの装いに戻った彼女は、
 隣にいたエルモアさんに何かを告げると、軽い足取りで駆け寄ってくる。
 
「リムルちゃん、おはようございます。
 昨夜はありがとうございました。とても楽しかったです」
 
「おはようございます。
 こちらこそ、連れ出してくれてありがとうございました。
 おかげさまで楽しかったです」
 
 血色の良い頬で笑う彼女に、僕もまた、にっこりと笑った。
 
 
 昨夜はハロウィンというイベントのおかげで、楽しい一夜を過ごすことができた。
 ネピアちゃんと色違いのかぼちゃ風の衣装を着て、
 かぼちゃで作ったランタンの明かりを手に、
 テントからそう遠ざからないくらいの距離を2人で歩いた。
 
 僕らのテントの周辺には同じように夜を明かす人達も多く、
 仮装した人々とお菓子を摘みながらひとときの団欒。
 初めて目にする衣装や飾りは僕の心をわくわくさせ、
 多人数で持ち寄られたお菓子たちは、どれも甘く、とても美味しかった。
 
 テントに戻ったのは月も頂上を過ぎた頃。
 昼間、巨大竈馬と逃げるおにくに死闘を繰り広げたというのに、
 体力的には厳しい夜更かし。
 けれど今、不思議と疲れは感じていない。
 朝食の合間にネピアちゃんの顔を窺ってみるも、
 彼女も特に眠たそうな素振りは見せず、いつも通り明るい表情だ。
 
 そういえば、世の中には睡眠時間の少なさを自慢するひとも居ると、
 以前エレナから聞いたことがあった。
 そのセリフを聞いた瞬間、戸惑いと若干の笑いを誘われたものだけれど、
 一体それはどんなセリフだったか・・・・・・。
 
「つれー。昨日実質1時間しか寝てないからつれーわー。
 マジ寝てないからつれーわー」
 
「それだ!」
  
 たまたま近くを通りかかった別パーティのひとの言葉に、僕は思わず相槌を打った。
 その声に反応した発言の主は、ちらりとこちらを一瞥したあと、
 同じような言葉を繰り返し去っていった。
 悩む間もなく答えを得られたのは嬉しいのだけれど、
 いきなり声を上げた僕に対する皆の訝しげな視線が痛い。
 
「そういえば、ユーモラスさんも子供達に囲まれて嬉しそうでしたね」
 
 どう言い訳しようかうろたえていた僕に、
 軽く首を傾げたネピアちゃんが、ふと思い出したように言った。
 
「そ、そういえば、そうだったね」
 
 いつも戦闘の時に颯爽と現れて、戦い終わると高笑いをしながら去っていく、
 正義のヒーロー、キャプテン・ユーモラス。
 昨夜、そんな彼がシール入りソーセージとやらを配る姿を、僕らは見たのだ。
 
「こういう地道な活動が未来のヒーローを生むのだ、とか言ってたよね」
 
「はい。さすがはヒーローです!
 正義は1日にしてならぬものなのですねっ」
 
「物珍しい格好に好奇心を煽られただけじゃないですか?」
 
 同調して笑顔で答えたネピアちゃんに、呆れた声でカオルくんが続いた。
 
「あのひとの場合、毎日が仮装大会みたいなものですよね・・・・・・」
 
 若干遠い目をしながら溜め息交じりの彼に、僕はふと宙を見やる。
 
 ヒーローを名乗る彼と会うのは、いつも戦闘の慌ただしい中。
 落ち着いてその姿を見たことは、ほぼないと言って等しい。
 けれど、この落ち着いた空気の中で冷静に思い描けば、
 その曖昧なイメージは容易く形を結んだ。
  
 顔の正面に、祝い事に使うのし袋のような仮面。
 側頭部には口の尖った男の仮面を付け、
 肩にはどこかで見たことのあるような形状のパット。
 細目で見ればほぼ全身白タイツという、確かに少々奇抜な格好だ。
 自分が同じ格好をしろと言われたら、かなりの覚悟が必要だろう。
  
「・・・・・・さすがはヒーロー、と言ったところでしょうか・・・・・・」
 
 僕が思いつめるように言うと、カオルくんが訝しげな顔を向ける。
 
 あのくらいインパクトのある衣装を着こなせるぐらいじゃないと、
 ヒーローは務まらないのかもしれない。
 そう続けようとした瞬間、ネピアちゃんの無邪気な声があがった。
 
「そうですよ!ヒーローは子供に人気なものですからねっ。
 きっとそのうち、ユーモラスさんの変身ベルトとか、
 スーツとかが販売されて、みんな身に付けるんじゃないですか?」
 
「どんな地獄絵図ですか?!!」
 
 カオルくんが絶望したような表情で叫んだ。
 黙々と食事をしていたエルモアさんも、小さくを目を見張って彼を見る。
 
「でも、カオルさんも、
 いつかはユーモラスさんみたくなりたいと思ってるんですよね?」
 
「縁起でもないこと言わないでくださいっ!!」
 
 無邪気に畳み掛けられたカオルくんが、強張った顔で戦慄き叫ぶ。
 それは決して照れ隠しなどではなく、心の底からの本音なのだと、
 彼の表情と声から窺い知ることができた。
 けれど、またまたぁと嬉しそうに笑うネピアちゃんに、
 僕とエルモアさんは曖昧な笑みを添えることしかできなかった・・・・・・。
 
 
 
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