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鍛冶屋サキュバス奮闘記

定期更新型ネットゲーム『sicx Lives』に参加している、リムル(579)の日記帳です。 主に日記置き場ですが、お絵描きしてたり、何か呟いてたりもします。

カテゴリー「リムルの日記帳」の記事一覧

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焔の月 10日目

 

「・・・・・・む、結ぶのが、難しそうですよねっ」
 
 どうにか繋げたものの、苦しい言い回しに冷や汗だ。
 俯いた顔を上げ、おそるおそるエルモアさんを見てみれば、
 彼女は渋い顔をしながら己の腰周辺を見つめていた。
 
「そうなのよね。気を付けないとすぐ着崩れしちゃうし・・・・・・。
 やっぱり着物って難しいわね」
 
「でも、エルモアさんがしっかり着付けてくださいましたから、まだまだ大丈夫ですよ!
 私のだって、こんなに綺麗ですっ」
 
「そうね。まぁ、崩れたらまた直してあげるから大丈夫よ」
 
 にっこりと笑い合う2人。
 どうやら変には思われず済んだらしい。
 ほっと一呼吸つくと、後方から聞き慣れた声が続いた。
 
「やぁやぁやぁ!みんな揃っているようだね!
 あけましておめでとう!今年もよろしく頼もうじゃないか!」
 
「あ、ユーモラスさん。あけましておめでとうございます」

「今年もよろしくね」
 
「今年も大活躍ですねっ。楽しみですっ」
 
「大活躍ついでにさっさとボスを倒して国に帰ってくれればとも思うんですけどね」
 
「はっはっは!年始からつれないな安倍沢君!
 私に悪態をつく前に、女性陣の華やかな晴れ姿を褒めたまえよ!」
 
 どうやらユーモラスさんとカオル君はいつも通りらしい。
 心底迷惑そうな目でユーモラスさんを睨むカオル君に、
 エルモアさんはのほほんと笑っている。
 ネピアちゃんに至っては、ユーモラスさんが現れてとっても嬉しそうだ。
 
「うむうむ、華やかなのはいいことだ!見たまえ!
 私も正月バージョンのコスチュームに華やかにチェンジだ!」
 
 そう言ったユーモラスさんは、シャキーン!とでも効果音が出そうなポーズを
 きりりと決めて静止した。
 どうやら正月バージョンとやらのコスチュームを見せてくれているらしい。
 へぇ、と思いつつ見てみるものの、いつもと大した変わりはないように見えた。
 
「・・・・・・・・・・・・」
 
「・・・・・・・・・・・・」
 
「・・・・・・・・・・・・」
 
「・・・・・・・・・・・・」
 
「ふっ。身体に描いてある歌舞伎の顔が、お多福の顔になっているのだ!!」
 
「わぁ!本当だー!見てくださいエルモアさん!お多福です!」
 
「あらほんと。おめでたいわねー」
 
「自分で言わなきゃ気付いてもらえてないじゃないですか・・・・・・」
 
「あはは。そういえばいつも赤と白で、お正月っぽいですもんね」
 
 
 ひとしきり皆で笑った後、
 たまには探索を休憩して、こうやって賑わうのもいいな、と思いました。
 
 
                                       おしまい



 
 ゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:* ゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*

 お正月といえば女子の晴れ着姿だよね☆というわけで絵日記ばんざい!
 しかしながらユーモラスさんは描くのが大変難く、残念ながら文章での参戦です。
 画力が足りない所為で、ヒーローじゃなくて覆面レスラーになっちゃうよー/(゚∀゚)\
 でもご本人から「覆面レスラーおk!レッツ全身タイツ!」って言って貰えたので
 またの機会にはがんばりたいと思います!レッツ全身タイツ!
 
 本家では絵の登録アドレスを間違えました\(^o^)/
 しかも直しようの無いプロパイダ部分!まさかすぎて吹きました。
 オートコンプリート機能は便利だけど、頼りきっちゃダメですねっ。

 ゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:* ゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*
 
 
 
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焔の月 8日目


 
 
 ゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:* ゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*

 7日目は日記が書かなかったので、8日目は絵日記でがんばってみました。
 エルモアとユ-モラスがバイオハザードネタできたので、リムルも参戦。
 なかなか楽しく描けたイイ一枚になりました(´∀`*)
 聖職者が前衛で肉弾戦とか意外すぎますよね!思い込みって怖いなぁ!
 あと、エルモアさんは迂闊すぎです。
 
 ゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:* ゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*゚・*:.。..。.:*・゜・゜゚・*:.。..。.:*
 
 
 

焔の月 6日目

 
 
 ハロウィンから一夜明けた朝。
 
 
 身支度を整えてテントから出ると、
 すでに朝食の支度を始めていたネピアちゃんと目があった。
 昨夜のかぼちゃワンピースからいつもの装いに戻った彼女は、
 隣にいたエルモアさんに何かを告げると、軽い足取りで駆け寄ってくる。
 
「リムルちゃん、おはようございます。
 昨夜はありがとうございました。とても楽しかったです」
 
「おはようございます。
 こちらこそ、連れ出してくれてありがとうございました。
 おかげさまで楽しかったです」
 
 血色の良い頬で笑う彼女に、僕もまた、にっこりと笑った。
 
 
 昨夜はハロウィンというイベントのおかげで、楽しい一夜を過ごすことができた。
 ネピアちゃんと色違いのかぼちゃ風の衣装を着て、
 かぼちゃで作ったランタンの明かりを手に、
 テントからそう遠ざからないくらいの距離を2人で歩いた。
 
 僕らのテントの周辺には同じように夜を明かす人達も多く、
 仮装した人々とお菓子を摘みながらひとときの団欒。
 初めて目にする衣装や飾りは僕の心をわくわくさせ、
 多人数で持ち寄られたお菓子たちは、どれも甘く、とても美味しかった。
 
 テントに戻ったのは月も頂上を過ぎた頃。
 昼間、巨大竈馬と逃げるおにくに死闘を繰り広げたというのに、
 体力的には厳しい夜更かし。
 けれど今、不思議と疲れは感じていない。
 朝食の合間にネピアちゃんの顔を窺ってみるも、
 彼女も特に眠たそうな素振りは見せず、いつも通り明るい表情だ。
 
 そういえば、世の中には睡眠時間の少なさを自慢するひとも居ると、
 以前エレナから聞いたことがあった。
 そのセリフを聞いた瞬間、戸惑いと若干の笑いを誘われたものだけれど、
 一体それはどんなセリフだったか・・・・・・。
 
「つれー。昨日実質1時間しか寝てないからつれーわー。
 マジ寝てないからつれーわー」
 
「それだ!」
  
 たまたま近くを通りかかった別パーティのひとの言葉に、僕は思わず相槌を打った。
 その声に反応した発言の主は、ちらりとこちらを一瞥したあと、
 同じような言葉を繰り返し去っていった。
 悩む間もなく答えを得られたのは嬉しいのだけれど、
 いきなり声を上げた僕に対する皆の訝しげな視線が痛い。
 
「そういえば、ユーモラスさんも子供達に囲まれて嬉しそうでしたね」
 
 どう言い訳しようかうろたえていた僕に、
 軽く首を傾げたネピアちゃんが、ふと思い出したように言った。
 
「そ、そういえば、そうだったね」
 
 いつも戦闘の時に颯爽と現れて、戦い終わると高笑いをしながら去っていく、
 正義のヒーロー、キャプテン・ユーモラス。
 昨夜、そんな彼がシール入りソーセージとやらを配る姿を、僕らは見たのだ。
 
「こういう地道な活動が未来のヒーローを生むのだ、とか言ってたよね」
 
「はい。さすがはヒーローです!
 正義は1日にしてならぬものなのですねっ」
 
「物珍しい格好に好奇心を煽られただけじゃないですか?」
 
 同調して笑顔で答えたネピアちゃんに、呆れた声でカオルくんが続いた。
 
「あのひとの場合、毎日が仮装大会みたいなものですよね・・・・・・」
 
 若干遠い目をしながら溜め息交じりの彼に、僕はふと宙を見やる。
 
 ヒーローを名乗る彼と会うのは、いつも戦闘の慌ただしい中。
 落ち着いてその姿を見たことは、ほぼないと言って等しい。
 けれど、この落ち着いた空気の中で冷静に思い描けば、
 その曖昧なイメージは容易く形を結んだ。
  
 顔の正面に、祝い事に使うのし袋のような仮面。
 側頭部には口の尖った男の仮面を付け、
 肩にはどこかで見たことのあるような形状のパット。
 細目で見ればほぼ全身白タイツという、確かに少々奇抜な格好だ。
 自分が同じ格好をしろと言われたら、かなりの覚悟が必要だろう。
  
「・・・・・・さすがはヒーロー、と言ったところでしょうか・・・・・・」
 
 僕が思いつめるように言うと、カオルくんが訝しげな顔を向ける。
 
 あのくらいインパクトのある衣装を着こなせるぐらいじゃないと、
 ヒーローは務まらないのかもしれない。
 そう続けようとした瞬間、ネピアちゃんの無邪気な声があがった。
 
「そうですよ!ヒーローは子供に人気なものですからねっ。
 きっとそのうち、ユーモラスさんの変身ベルトとか、
 スーツとかが販売されて、みんな身に付けるんじゃないですか?」
 
「どんな地獄絵図ですか?!!」
 
 カオルくんが絶望したような表情で叫んだ。
 黙々と食事をしていたエルモアさんも、小さくを目を見張って彼を見る。
 
「でも、カオルさんも、
 いつかはユーモラスさんみたくなりたいと思ってるんですよね?」
 
「縁起でもないこと言わないでくださいっ!!」
 
 無邪気に畳み掛けられたカオルくんが、強張った顔で戦慄き叫ぶ。
 それは決して照れ隠しなどではなく、心の底からの本音なのだと、
 彼の表情と声から窺い知ることができた。
 けれど、またまたぁと嬉しそうに笑うネピアちゃんに、
 僕とエルモアさんは曖昧な笑みを添えることしかできなかった・・・・・・。
 
 
 

焔の月 5日目

 
 
「リムルさん、何を書いているんですか?」
 
 
 ハムスター退治の依頼を無事に終え、夜の食事も済んで各々自由に過ごす時間。
 テント前でランタンの明かりの元、日記を書いている僕に声をかけてきたのは
 エルモアさんの連れである研究者の少女、ネピアちゃんだった。
 
「うん、日記をね。やっと今、村から旅立った所まで終わったんだ」
 
 僕は丁度書き終えたページに栞を挟み、そう分厚くない日記帳を鞄へと仕舞う。
 村を出る直前はバタバタしてて、ちゃんと書くことができなかったからと言い訳しつつ、
 昼間はリムルちゃん、夜はリムルさんと呼んでくれる彼女へと視線をやると、
 
「・・・・・・あれ? ネピアちゃん、その格好は?」
 
 昼間の可憐なワンピースとは違う、カボチャのような衣装をまとったネピアちゃんが居た。
 
「えへへ。今日はハロウィンですよ。
 お昼はいっぱい歩いたり、戦ったりで汚れちゃうから、夜までとっておいたんです」
 
 そう言いながら、はにかむような笑顔で裾をつまみあげ、
 小さくお辞儀をしてみせる彼女はとても可愛らしい。
 
「ハロウィンかぁ・・・・・・そういえば、名前だけは聞いたことがあるかも。
 残念ながら僕の村ではしたことがなくて、本物を見るのはこれが初めてだよ」
 
「そうなんですか? それは勿体無いです!
 みんな色んな仮装をするから見て周るだけでも楽しいし、
 お菓子も貰えたりして、とても楽しいイベントなんですよ」
 
 大きな目をぱちくりと瞬いた彼女は、笑いながら僕の手をとり自分のテントへと誘った。
 
「え? あの、ちょ、ね、ネピアちゃん・・・・・・?!」
 
 今は夜で、僕は30歳近くの男の姿で、ネピアちゃんは14歳の少女だ。
 最近のコは早熟だと以前エレナに言われたことはあるが、さすがにこれは早すぎる。
 大胆にも自分のテント内へ引き込もうとする彼女に、僕が慌てて立ち往生していると、
 
「ね? リムルさんも、お着替えしましょう?」
 
「うん、その、え、着替え?」
 
 彼女が無邪気に笑いながら入り口を開けたテント内には、
 幾つものオレンジやピンクの衣装が、所狭しと広げられていた。
 
「・・・・・・・・・・・・着替え、ね。あは、あはははははは」
 
 自分の勘違いに気付いて顔が熱くなる。
 とっさに乾いた笑いでお茶を濁す僕を、ネピアちゃんはにっこりと笑い、
 
「えへへ。リムルさん、どの衣装が着たいですか?」
 
「え? えっと、そうだね、どうしようかな?」
 
 再度着替えを勧められ、視線をテント内へと戻した。
 どこから持って来たのかは知らないけれど、6、7着はあるようだ。
 どれにしようかと視線をさ迷わせていると、
 
「ちなみに、私のオススメはコレです!色違いのカボチャワンピース!」
 
 明るい声でネピアちゃんが、1つの衣装を摘み上げた。
 
 
 
                           ~ プロフ絵に続く ~
 
 
 

焔の月 4日目

 
 
「だから四の五言わずに押し倒せばいいって言ったじゃないの」
 
 
 あと数時間もすれば夜も明けるだろう時間の自室。
 旅支度をしながら事の顛末を語る僕を、エレナは呆れたように笑った。
 
 今夜こそはと挑んだ3人に、僕は呆気なくフラれた。
 鞭が好きかと訊いたフィオナと、ちょっと恥ずかしい儀式を持ちかけたナタリー。
 この2人は、少々変わった嗜好に僕が付いていけなかったと思えば諦めもついた。
 けれど、くすぐったがりやだと言ったアイリスの言葉だけが、
 何度考えてみても、どうにも納得できなかった。
 
「だって、アイリスの背中、真っ白だったもん・・・・・・。
 肩の後ろの2本のツノの真ん中にあるトサカの下のウロコの右なんて、
 絶対になかったよ・・・・・・」
 
「肩の後ろの2本のゴボウの真ん中にあるすね毛の下のロココ調の右ねぇ・・・・・・。
 ゴボウって時点でおかしいわよね。あと、女子ともあろう者がすね毛っていうのも」
 
「誰もそんなこと言ってないよ―――?!」
 
「え? あ、ごめんごめん。ええと、
 肩車して後ろ向きに乗り2本のゴボウを持った歌舞伎顔の男だったわよね」
 
「・・・・・・もう、いいよ・・・・・・」
 
 なんだかとんでもない進化を遂げてしまったアイリスの弱点に、
 僕は溜め息をつきながら荷造りを終えた。
 丈夫な麻の鞄に、着替えの服数着と、護身用武器に自作の大鎌。
 持って行けるものが少ないと言ってしまえばそれまでだけれど、
 思っていた以上に荷物は少なくて済んだ。
 
「それで? 明日にもこの村は出るわけ?」
 
「そのつもりでいるけどね」
 
 後ろから荷物を覗き込みながら、エレナは始終明るい声で言う。
 
「・・・・・・エレナ、実は僕が失敗して喜んでたりしない?」
 
「やだ、わかる?」
 
 なんとなく感じて投げかけた言葉に、エレナは悪びれなく微笑んでみせた。
 
「アタシはね、アンタがここで一生を過ごしそうな雰囲気がヤなの。
 ここで伴侶を見つけて一生人間として過ごす? 無理よ。
 アタシたちと人間じゃ寿命が全然違うもの」
 
「別に、ここに一生居るつもりなんてないよ。
 鍛冶に出会わせてくれた母さんや父さんには感謝してるし、
 必要とされている限りはここに居たいと思うけど・・・・・・」
 
「うそつき。この村の誰かと交わって男になるんでしょ?
 相手に子供ができたらどうするの?
 自分は父親にならないで、それでもずっとこの村に居続けるの?」
 
「ううぅ・・・・・・」
 
「まだ数ヶ月程度の付き合いだけどわかる。アンタにはムリよ」
 
 目を見つめられながらぴしゃりと言われ、僕は視線を落として口ごもった。
 確かに相手に子供ができたとすれば、僕はその母子と一生を過ごすことになるだろう。
 そして年老いて死ぬ家族を看取り、未だ老いることもない自分を見つめ、
 その時にしか分かりえない何かを思うに違いない。
 
「そもそもアタシたちは、一夜限りの出会いを一生続けて生きてく生き物だからね」
 
 どこかに居つこうとすること自体が間違っている。
 静かに、けれど、はっきりとした口調でエレナは言った。
 
「・・・・・・とりあえず、明日は・・・・・・もう、今日だけど、
 母さんと父さんに挨拶だけして、早めに出ようと思う」
 
「いいんじゃない?
 フッた翌日に相手が村を出るとなれば、その女たちも後味悪いでしょうし」
 
 余計なことはせずにちゃっちゃと出ましょうよと軽く言われ、僕は小さく拳を握った。
 
 本当にこれでいいのかな?
 むしろ、フラれたことはよかったのかな?
 外の世界には色んな人が居て、きっと自分に合う相手が見つかる。
 その時は、またこの村に戻ってこれる?
 この村で、母さんと父さんのもと、親子として過ごす?
 
「それにしても、娘として可愛がってきたアンタが消えて、
 一生オッサンのままのアンタが戻ってきたら、
 あのひとたちも一体どう思うんでしょうね」
 
 
 心を読んだかのようなエレナの言葉に、息が止まった。
 
 
 元々拾われた時も女性体だったし、2人と過ごすほとんどの時間が女性体だった。
 男として性別が確立した僕は、2人にとって望まない存在になるのだろうか?
 僕は、この村を出ると決めたならば、もう戻ってきてはいけない?
 
 
 そう至った考えに、頭が重く、身体が傾ぎそうになった瞬間だった。
 
 
「そうねー。娘として可愛がれなくなるのは、とってもとっても残念だわ」
 
「けれど、見た目が変わるだけで中身は一緒だろう? なら、大した問題ではないさ」
 
「か・・・・・・母さん、父さん!」
 
 
 しっかり閉まっていたはずの扉の前に、寝間着姿の母さんと父さんが立っていた。
 
 
「びびびびび、びっくりしたぁあ~!アタシまで姿見られちゃったじゃない!」
 
 声がかかるまで全く気付けなかった。どうやらそれはエレナも同じらしい。
 度肝を抜かしてベットから転げ落ちたエレナが、珍しく慌てた表情で叫んだ。
 
「ふふふ。あなたがいつもリムルの喋り相手になってくれていたコね。
 ありがとう。やっとご挨拶ができて嬉しいわ」
 
 にっこりと微笑みながら、母さんがエレナへと手を差し伸べる。
 
「リムル。わたしたちは、お前が男として一生を過ごすことになっても一向に構わない。
 お前が鍛冶仕事を楽しんでやってくれているのはわかっているし、
 昼間の小さな姿よりも、頑張って成長したその姿の方が理に適っているのもわかる」
 
 優しげな微笑みを浮かべた父さんが、僕の前まで来て、そう言った。
 
「でも、やるだけやって、後は知らぬフリというのは感心できないな。
 その時は、お嫁さんを連れて帰ってきなさい」
 
「そうよ。私たちは、あなたがまたここに帰ってきてくれるなら、それでいいわ。
 本当なら子供が産めない私たちの元へあなたが来てくれたこと、
 とても、とても感謝してる・・・・・・」 
 
「か、母さん、父さん・・・・・・」
 
 じんわりと、涙腺が緩むのがわかる。
 膜の張った揺らぐ視界の中で、僕は2人の顔をしっかりと目に焼き付けた。
 
「あ、ありがとう、母さん、父さん。
 僕、しばらくこの家を空けるけど、絶対また帰ってくるからっ」
 
「そうよ。出て行ったきり戻ってこないなんて、それこそ許さないわ」
 
「ああ。だが家を出る前に、父さん直伝の忍び足と扉明けの技を教えよう」
 
「びっくりしたでしょー? お父さんったら、昔は暗殺者だったのよ☆」
 
「今は母さんだけを狙う、愛の刺客・・・・・・だけどな・・・・・・」
 
「うふふふふふ!やぁだ、ダーリンったら!
 リムルもお客さんも居る前で恥ずかしいっ!」
 
「はははははは!リムル、お前もこんな母さんみたいな
 素敵な女性を射止めてくるんだぞっ」
 
「うふふふふふ!」
 
「はははははは!」
  
 
「・・・・・・あはははは」
 
  
 こうして夜は更けて行き、
 僕は母さんの作ってくれたお弁当と、父さん直伝の技を習得して村を出た。
 途中まで一緒だったエレナは、
 「あまりの甘ったるさに胸焼けがするから口直ししてくるわ」と言って、
 僕の向かう街とは別方向に消えていった。
 
 しばらく一緒に行動することとなる、エルモアという女性と、ネピアいう少女。
 そしてカオルという青年。キャプテン・ユーモラスと名乗る謎のヒーローとトリ。
 僕が彼女らと出会うことになるのは、もう、すぐ目の前の出来事だ。
 
 

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