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鍛冶屋サキュバス奮闘記

定期更新型ネットゲーム『sicx Lives』に参加している、リムル(579)の日記帳です。 主に日記置き場ですが、お絵描きしてたり、何か呟いてたりもします。

カテゴリー「旧:紅雪の日記(偽島2期)」の記事一覧

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探索44日目。

 
 耳をくすぐる、小鳥のさえずり。
 まぶた越しに降り注ぐ、やわらかな光。
 鼻孔に広がる、緑の匂い。
 
「う・・・ん・・・・・・」
 
 外界からの様々な刺激が、ボクの覚醒を促す。
 
「よく・・・寝た・・・・・・ふわぁ・・・・・・」
 
 すでに覚醒中である紅露の意識の裏で、ひっそりと目を覚ました。
 噛み殺せなかったあくびで、料理のいい匂いが口腔へと誘い込まれる。
 
「わ、今日は和食だ。いいな~、ボクも煮っ転がし食べたい」
 
 紅露の目を通して見える、美味しそうな料理の数々。
 向かいには桔梗とたろいもが同席している。
 どうやらたった今、朝食をとり始めたばかりのようだ。
 
「あ、焼き魚だ、珍しい。いつもなら煮魚なのに・・・・・・ん?」
 
 ふと目に付いたのは、いつもと少し違う趣向の料理。
 そして、紅露の手元よりも少し上・・・・・・胸元にある異様なふくらみだった。
 
「んんんー?」 
 
 目を凝らしてみるものの、衣服の上からではよく判らない。
 おっぱいの柔らかな曲線の他に、何かがでこぼことした形を作っている。
 それで胸の大きさを誇張するならまだしも、これでは形が悪く見えるだけだ。
 
「何入れてるんだろ紅露。なんか、へんな感じがするけど・・・・・・」
 
 なんだか、非常に気になる。
 
「・・・・・・よぉーし」
 
 小さく息を吐いて目を閉じ、意識を集中させる。
 いつもはうっすらとしか展開していない感覚網を、限界まで広げてゆく。
 肌に感じていた柔らかな日差しが強くなり、味覚と嗅覚が鋭くなる。
 紅露が食べているはずの料理を、まるで自分が食べているかの様な錯覚。
 胸元に触れる異物感が少しずつ増すと同時に、
 
「・・・・・・あ」
 
 首に、慣れない紐の感触。
 
 
 
 
「わー!!! 忘れてたぁあああ!!!!!」
 
 
 
 
 気になる物の正体は、自分が首に提げたフィギュアであると判明した。
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探索41日目。

王子様手作りのフィギュアはとってもセクシーだった。
可愛いし嬉しいし、いつまでも見ていたいんだけど、
今のボクの姿は傍から見れば、ちょっとした不審者のはずだ。
ただでさえフィギュアを見つめてご満悦って現場なだけでアレなのに。
見つめる先のフィギュアは明らかに自分を象ったものであり尚且つ半裸。
そして、イチゴを抱きしめてセクシーポーズ。
 
 
・・・・・・あれ?もしかしなくても立派に変態だ―――!!!
 
 
ナルシストここに極まりだよ!!危ないよ!!
でもフィギュアは可愛いよぉ・・・・・・!!
とりあえず今は、どこに隠して持ち歩くかを考えなくちゃ・・・!!
 
 
 

探索40日目。

 王子様と従者さんのウォッチングを再開してから数日が経った。
 今日も王子様は従者さんと一緒にダイエットに励んでいる。
 荒い息を吐きながら重そうな身体を揺らして走る王子様と、
 その隣で励ましの言葉をかけながら一緒に走る従者さん。
 彼の涙ぐましいまでの甲斐甲斐しさに、ボクは木の陰から感嘆の眼差しを送る。
 けれど、王子様が痩せる前に、そんな従者さんがやつれてしまわないか少し心配だ。
 
「・・・・・・ふぅ。そろそろ戻らなきゃ」
 
 ボクは2人の様子をしばらく窺った後、太陽の高さで時間を確認して踵を返した。
 紅露の意識が戻らないうちに桔梗達のもとへ戻らなければならないのだ。
 紅露に自分は夢遊病の気があるかもなんて、変な不安はさせたくない。
 
 こうしてボクは、2人のウォッチングを楽しんだ後にはいつも足早にその場を去っていた。
 
 けれど今日はいつものように終わらなかった。
 なんと、戻り途中だったボクのところへ従者さんが来てくれたのだ。
 さらに彼は話しかけてきてくれて・・・・・・ケーキをくれた。
 バレンタインは嬉しかったって。遅くなったけれど、そのお返しだって・・・・・・。
 
 う、嬉しいよー!!
 その言葉が聞けただけでも飛び上がりそうなほど嬉しいのに!
 さらに手作りのケーキだなんて!!
 
 舞い上がったボクは何度となくお礼の言葉を繰り返し、足早にテントへと戻った。
 外に出ていた2人に帰還したと声をかけ、はやる気持ちを抑えられずテントに潜る。
 わくわくしながらリボンを解き、箱を開け、ボクが目にしたものは・・・・・・。
 
 
「せ、セクシィー―――ッ!!!」
 
 
 一瞬で赤面できるほど精巧に作られた、裸体でセクシーポーズな自分のフィギュアだった。

探索37日目。

 
 無残にも打ち上げられたチョコを見送ったあの日から数日・・・・・・。
 頑張って作っただけにちょっとがっくりきちゃったボクは、
 紅露の中から面出ることもなく、独り大人しく過ごしていた。
 
「紅露はいいなぁ・・・・・・ちゃんと食べてもらえて」
 
 思わず口をつくのは紅露への羨望の言葉。
 先日、造られしものの口に見事手作りチョコをぶち込んで、
 そのまま相手を昏倒させた記憶はまだ新しい。
 
「ボクも食べてほしかったなぁ・・・・・・いや、昏倒させる気は毛頭ないけど」 
 
 けれど、幾ら思い返そうとチョコは返ってこない。
 空高く打ち上げられたそれは、きっとどこかで動物のエサにでもなっているだろう。
 
「あれからしばらく王子様達見てないけど・・・・・・一体どうしてるのかな?」
 
 チョコは誰かにあげていたようだったけれど、あれは手作りだったのだろうか?
 人気者の王子様のことだから、きっと他にも沢山のひとから貰ったんだろうな。
 もしかしたらあの従者さんも、王子様に手作りしてあげたりしたのかな?
 
 一度気にし始めると止まらない。
 長らく続けていたウォッチングだ、そろそろ禁断症状が出始めたらしい。
 
「うう、やっぱり気になるっ。紅露の身体ちょこっと借りて見に行っちゃおう!」
 
 思い立ったが吉日とばかりに奮い立つ。
 造られしものとの戦いが無事に済み、多少気が抜けたらしい紅露の隙を狙い、
 こっそりと意識の幅を広げて身体の主導権を握る。 
 
「なんだかんだ言ったって、気になるものは気になるんだもの」
 
 手作りチョコを受け取ってもらえなかったことくらいで忘れることなどできないのだ。
 
 
 
 そんなこんなで、久々の王子様と従者さんの姿を見たボクは驚愕することになる。
 
 
 
 王子様に何が起こったんだ―――――――!!!!!
 
 

探索35日目。

 
 狼のような鳴き声が、遠く聞こえる島の夜。
 昼間の喧騒が嘘の様な静寂の中、ボクはそっと起き上がった。
 沈む闇に目を凝らせば、静かに寝息を立てる桔梗とたろいもの姿が浮かぶ。
 
(寝付いてからは、大分経ったはずだけど・・・・・・)
 
 念には念を入れておくべきだろう。
 起き上がったままの体勢で気配を探る。
 ・・・・・・二人とも、よく眠っているようだ。
 
「よぉし、今のうちにボクもチョコを作らなくちゃっ」
 
 ボクは小声でそう呟くと、極力音を出さないように寝床を後にした。
 
 ボクがこんな時間に人気を盗んで起き出したのにはわけがある。
 日中、楽しそうにお菓子を作る紅露を、内側から見ていた自分。
 料理をしている紅露なんて見慣れているはずなのに、何故か心が揺れた。
 
 紅露にチョコをくれた氷雨さんに、ボクもお返しをあげたい。
 できることなら、あの王子様と従者さんにもあげてみたい・・・。
 
「それには、この時間帯しかないもんね」
 
 ボクは眠る二人から少し離れた場所まで移動すると、地べたに座って荷物を広げた。
 明日は大事な戦いがあるみたいだから、紅露の身体はなるべく早く休ませてあげたい。
 けれど、初めてのお菓子作りは少なからず不安だ。
 そして、その不安は目の前の光景によって早々と大きくなった。
 
「・・・・・・えーっと、どれが食べれる粉・・・・・・?」
 
 袋の中から出てきたのは、色とりどりの粉末や液体。
 それぞれが小瓶や透明の袋に入っているが、ラベルらしきものは一切見当たらない。
 色が同じでも形が粗いものであったり、粒が細かかったりと様々だ。
 通常ならば、調味料と毒物が一緒くたになっていることなどありえない。
 けれど、これは薬や毒の調合用に粉末を幾つも持つ紅露の荷物なのだ。
 絶対に安全だとは、言い切れなかった。
 
「もぉ~! 紅露ったら、どうやって見分けてるの~?」
 
 置いていた灯火を寄せて目を凝らしてみる。
 けれど、如何に見つめようとも無駄だった。
 作り方は紅露の目を通して覚えたけれど、材料の選別方法までは分からない。
 調理中の手際を案じていたが、まさか作る前で躓くとは誤算だったのだ。
 
「うう・・・でも、悩んでる時間は無いし、諦めるなんてもっといやだし・・・」
 
 そう言っている間にも時間は過ぎていく。
 そうだ、一度やると決めたからには、ぐずぐずしている暇はないのだ。
 まずは一番の主役であるチョコを見つけなければ話にならない。
 気を奮い立てて、荷物を探る。
 
「・・・・・・あ、これ、かな?」
 
 指先に当たったのは、焦げ茶で不揃いな粒の粉袋だった。
 チョコの塊を調理しやすい様、粉々に砕いたものに見えなくもない。
 
「じゃぁ、これが小麦粉かな。白いし、粒も細かいし・・・・・・」
 
 手前にあった白い粉の袋に、希望を託しながら手を伸ばす。
 けれど、すぐ傍に似たような袋を見つけてしまって、くちびるを噛んだ。
 作る前からこんなに時間を食っていては、健全な睡眠時間などとても守れそうにない。
 ボクは茶色い粉の袋を見つめ、ごくりと喉を鳴らす。
 
「こ、こうなったら、舐めて確かめるしか、ない・・・よね・・・」
 
 対象が例え毒物だとしても、少量ならきっと問題ない。
 幼い頃からさまざまな毒を摂取し、慣らされてきた薬師の身体だ。
 覚悟を決めて、袋を開ける。
 小粒の茶色い粉を指に乗せ、恐る恐る口に運び・・・・・・・・・ボクは勢いよくむせた。
 
「ぶは・・・っ!!げほ・・・!げほっ!!」
 
 辛い。すごく辛い。
 舌と喉が瞬時に干上がり、炎のような熱さの吐息となる。
 予測されていなかった衝撃の辛さに、ボクは涙ぐんで咳き込んだ。
 そこへ、草を踏み分ける音がして、続く怒号。
 
「なにやってんだい!うるさいね!」
 
 
 目を吊り上げて現れたのは、寝ていたはずの桔梗だった。
  
 
 ボクは桔梗が苦手だ。桔梗は怖い。
 いつも険しい顔をしてるし、戦闘中はいつも怒鳴ってばかりだ。
 そのくせ普段はあまり喋らず、食事も寡黙に済ます。
 
 先日、たまたま桔梗が魔石を作成しているところに出くわした。
 興味本位で見ていたら、小さく鼻歌を歌ってのが聞こえる。
 
「きっきょきっきょにし~てやんよ~♪」
 
 聞き覚えのあるメロディーだった。
 歌詞はよく知らないけれど、巷で流行っているらしい歌だ。
 
(可愛いところもあるんだなぁ)
 
 そう思った瞬間、物凄い勢いで桔梗が振り向いた。
 怒りに染まった赤い顔に、仄暗い眼光。
 さっきのは、たぶん「ぎったぎったにしてやんよ」の間違いだと思った。
 
「え、えっと、お邪魔してしまって・・・・・・すみません」
 
 ボクはそのまま微動だにしない桔梗に怯えつつ、その場を早足で去った。
 そうでなければ、手元で完成されつつある新しい魔石の被検体にされると思ったからだ。
 
(やっぱり、桔梗って怖い・・・!!)
 
 
 そんなちょっぴり恐怖の対象である桔梗が、今、目の前に居る。
 
 
「え、えっと、ごめんな・・・さい。作り忘れを、思い出して・・・」
 
 相手が怒っているのは明白なので、まずは謝るしかない。
 用意していた言い訳を、未だ辛さの退かない喉から搾り出す。
 
「こんな時間にかい? ・・・・・・ったく、明日の朝じゃ駄目なのかい」
 
 柳眉を潜めながらの文句と、同時に差し出された桔梗の手の平。
 反射的に身体を竦めて見つめた先には、魔術で呼ばれたのだろう水が、
 拳大ほどの球体となって浮いていた。
 どうやら舌足らずなボクの状況を察してくれ、親切にも助けてくれるらしい。
 
「す、すみません・・・」
 
 水は調理用に用意していたコップに注がれ、ボクは一気にそれを飲み干した。
 焼けていた喉が潤い、強張っていた舌の動きもなめらかになる。
 何を舐めてしまったのかは分からないが、とんでもないハズレを引いたのは確かだ。
 これを確認せずに使っていたらと思うと恐ろしい。
 
「お水、ありがとうございました。チョコはすぐに作り終わらせて、ちゃんと寝ます」
 
 ついでに、眠りを妨げてしまってすみませんと謝った。
 相変わらず桔梗の柳眉は険しい。
 普段から怒ってばかりの桔梗を更に怒らせるなんて、ボクは馬鹿だ。
 心身ともに項垂れるしかない。
 
「・・・・・・それで、アンタはどうしてそんな状態だったんだい」
 
「え? えーと、お恥ずかしながら荷物の整理を怠っていたら、
 材料が判らなくなってしまいまして・・・・・・」
 
 意外にも更に言葉をかけてきた桔梗に、少しだけ驚く。
 そして、そこで舐めて確かめてみたらこうなったと、紅露の口調を真似て白状した。
 
(ごめんね紅露、ボクの所為で間抜けな印象付けちゃった・・・)
 
 自分の失態に、ちょっとだけ泣きそうだ。
 
「・・・どんくさいね。見せてみな」

「え?」
 
 すぐ耳元で聞こえた声に、驚いて顔を上げる。
 桔梗はボクのすぐ隣にしゃがみこみ、少し間をおいてから袋へ手を出した。
 
「こいつとこいつと・・・・・・あと、こいつじゃなかったかい?」
 
 白い指が摘み上げた袋の中身は、茶色い粉と、白い粉と、黄色い塊。
 おそらくチョコと小麦粉とバターだ。
 
「あ、ありがとうございます!」
 
 思わず感謝の言葉が歓喜に染まる。
 桔梗から受け取った袋は即座に調理用器具の傍に並べて安置した。
 そのまま余計な材料を片付けようとして、視界の隅に移ったものに手が止まる。
 
(もしかして、あれって生クリームじゃぁ・・・?)
 
 視線の先には、粘度の低そうな白い液体の入った小瓶があった。
 
「そうでした。それで、これが生クリームで・・・」

「そいつは使わないほうがいいね。いやな予感がするよ」

 体裁を繕おうとした言葉尻を、有無を言わせぬ声に妨げられる。
 
「生クリームはこっちじゃないのかい?」
 
 鼻を鳴らして呟やかれた視線の先には、今のとはまた別の白い液体の小瓶。
 
「・・・・・・えーと、そうですね。ありがとうございます」
 
 素直に頷いて小瓶を手に取る。
 
(あっちもこっちも同じに見えるんだけど、何が違うんだろう・・・)
 
 不思議に思って見上げてみると、桔梗はすでに立ち上がって着物の裾を叩いていた。
 臀部では長い尻尾がぱたぱたと揺れている。
 そういえば、彼女は猫憑きとかなんとかと聞いた気もする。
 
(もしかすると、猫のカンってやつなのかな?)
 
 もしそうでなかったとしても、彼女は普段から食材に触れる機会のある女性だ。
 信じる価値は十分にある。
 何はともあれ助かったと、ボクは一呼吸ついて安堵した。
 
「あの、本当にありがとうございました。桔梗さん、優しいんですね」
 
「いいから、早く寝るんだよっ」
 
 改めて言った礼の言葉は、素っ気無い背中で返された。
 けれど、ちらりと見えた横顔は、闇に侵されながらも微かに色づいていたよう。
 そのまま寝床の方へと帰っていく桔梗に、ボクは思わず微笑んだ。
 
 もしかすると、あの人は意外と照れ屋さんなのだろうか。
 あの時の真っ赤な顔も、怒っていたのではなく、単に恥ずかしかっただけかもしれない。
 そう思うと、今のだって騒がしさに怒りに来たわけではなく、
 自分のことを心配されてきたような気がしてしまう。
 
「えへへ。うまく作れたら、桔梗にも食べてもらおうかな・・・・・・」
 
 ボクは桔梗に貰った材料を手に、早速チョコ作りへと取り掛かる。
 悪戦苦闘しつつもなんとか作り終わった頃には、空が僅かに白み始め、
 まるでボクの健闘を、太陽が祝福してくれているような気がした。
 
 
「・・・・・・あれ?」
 
「おはようございますッスー。朝御飯の支度ッスか? たろいも寝坊ですまないッスー」
 
 
ラッピングの手を停め、ふと真顔になったところに現れたのは、寝ていたはずのたろいも。 
 掛けられた言葉とは裏腹に、彼は十分過ぎるほど早起きだった。 
 
「うわあああー!!紅露、ごめーーーん!!」
 
 驚くたろいもを尻目に、頭を抱える。
 木々にこだましたボクの叫び声は、夜明け鳥の声と共に島に響いた・・・・・・。
  

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